IKUOのひとりごと 〜フランス便り〜

<2007.8.25 File No.1>

バカンス


フランスで有給休暇が法律で定められたのは1936年のこと、既に70年以上になる。
現在の労働基準法では年間5週間の有給休日を労働者に与えることを義務付けられている。

まとめて5週間とらなくとも、数度に分けて小口にとっても良いがとにかく年間5週間は
仕事から離れて好きなことが出来る、労働者にとっては有り難いシステムだ。
学生たちは、新学年が秋からスタートするので夏休みの宿題もなく正に3ヶ月の休日、となる。

小さな子供たちを持つ親達には、地獄の2ヶ月となる(子供のバカンスは2ヶ月)。
特に両親が働いている場合(最近は殆どそうだが)いかに幼い子供達のバカンスを過ごすか
悩みの種だ。 地方に両親が健在であれば、預けることも可能だが、必ずしも誰でも出来ること
ではない。

別荘を持っている裕福な人達なら、友人同士で子供たちを預かりあって
数箇所の家で何とか切り抜ける手もある。が、恵まれている部類になる。
市が主催する安く参加できる林間学校のようなのもあるが、二度と行きたがらない子供達が
多いと聞く。

普段働いている社会人たちの中には、バカンス中に旅にでる人も多いが
普段する時間のない家の改装、ペンキ塗り替え、又は読書、街中の散歩、等
必ずしもバカンス・イコール・旅行と言うわけではない。

バカンスを一番楽しんでいるのは、矢張り学生たちだ。
フランスの大学生たちは良く勉強する。真面目に勉強しないと進級できない。
又、何らかの資格を取るため大学に行くわけだからその為の努力を惜しまない。

幼少の頃は、親の都合で我が家にバカンスの一部を過ごしに来ていた友人たちの子供達も
今では大学生に成っているのもいる。
今度は自分たちの意思で我が家に遊びに来る、と思うと、より歓迎したくなる。

丁度今、2人の大学生が来ているので彼らのバカンスの過ごし方をあれこれ質問したので
フランスの若者たちの生活ぶりを垣間見られるかと思う。
彼らいわく、皆似たり寄ったりの事をしていると思う、とのことです。

共に美術大学の学生カップル。秋から建築科、2年生になる。
彼の方は子供の頃からカヤック・クラブで活躍するスポーツマン。
まずスタートは、電車でアムステルダムに叔母さんを頼って初めての訪問。
1週間の滞在後、パリに戻る。

彼女の方はその間1週間、建築事務所でスタージュ(無給研修生)として参加。
以後、2人の旅が始まった。

車でスタート。1日がかりでパリから900Km離れたプロヴァンス地方の彼女の両親の別荘へ。彼女の家族と一緒に2週間過ごす。
その間、1週間は別の友人もスペインに行く途中立ち寄って一緒に過ごす。

第2の目的地は800Km離れたArcachonと言う町。大西洋側の海岸へ。
他の9人の友人たちとジョイントして総計11人でのキャンプ生活を1週間。
大きなキャンプ場でサーフィンを楽しみに来るドイツからの若者が半数以上居たと言う。 
18-25歳ぐらいの若者中心の海岸に近い人気スポットらしく、春に80ユーロ前金払って予約
して場所を確保していた。
フランスでは今キャンプ場以外でテントを張ることは禁止されている。
4ヘクタールほどのキャンプ場ではブロックごとに洗面所、トイレ、シャワーがあるのみで
料理はキャンピング・ガスで自炊。
経費を頭割りにして、一人1泊6ユーロの宿泊費となったそうだ。
寝るのは各自のテントで寝袋使用。 食事代込みで一人1日10ユーロの予算。
キャンプ自体の楽しみもあるが、何より一番安くするには最良策という。

居残る友人たちと離れて、又700Km程の旅をしてメイエ村に。
ここで1週間ほど滞在してバカンス終了。
秋から始まる新学年に備えて、準備始める、と言う。

全てバカンスに必要な予算600ユーロ。
何より高いのがガソリン代と高速料金と嘆く。
彼らにとって大金だ。フランスの学生はお金を持ってないのが当たり前。
1年間、小遣いから節約したり、バイトしたりしながらバカンスのために貯金するそうだ。
健康的なお金の使い方で、爽やかで気持ちよい。
又これからの1年間、一所懸命勉強して次のバカンスの計画練るのが楽しみと話す。
叶わぬ夢と知りつつも、若者の特権を見せ付けられた思いだが、後味がなんとも心地よい。
はるか遠い昔、ギリシャのスコプロスという島で漁師の家を友人たちと借りて過ごしたバカンスや南イタリアのスパロンガの海岸で、テントで寝たことを懐かしく思い偲んだ。



キャンプ場の朝

キャンプ場の朝



楽しむことを知っている若者達

楽しむことを知っている若者達


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