IKUOのひとりごと 〜フランス便り〜


<2011.8.25 File No.21>


前庭のある画廊


前回帰国したおり、日本庭園を見学、研究するサークルが、まず訪れる事のない
個人邸宅の石庭を3カ所、見学出来るから、と誘って頂いた。
日本庭園研究家として、また写真家として活躍されている中田勝康氏が、
重森三玲作の枯山水の奥義を分かりやすく説明してくれた。
石庭と言えば龍安寺の庭を思い出すが、何気なく置かれた石に、全て意味が有る。
どの石をとっても皆自然そのままの状態で、手を加える事なく使っている事、
また抽象芸術に共通するモダンさも味わう学び多き楽しい1日を過ごす事が出来た。
皆と別れる前、駅前の喫茶店で先生囲んで庭園談義も楽しめた。

フランス庭園と言えば、各地のお城にある左右対称の低く刈り込まれた植木が
シンメトリックな幾何学模様をなす事を通常意味するが、一般家庭ではまず
そのような庭は目にする事はない。
フランス人が日本庭園を考えるとき、どう言う庭か?の質問に一瞬考えたが、
彼らから見れば、日本人は自然とともに生きている、
四季折々の季節感を身じかに感じて生きていると思っている。
ツツジ等きれいに刈られた庭に、竹が植えられて池が有って鯉が泳いで、
松の木は形よく暫定され、程よい高さで小高い丘状の起伏も程々に・・・
山、湖、木が自然に存在するように。
一般的にはこんな具合ではなかろうか?と答えた。

私自身は緑の木に安らぎを覚えるので、石庭ではむしろ緊張感を味わった。
リラックスして、と言うよりも真面目に見学と言う事で
固くなっていたのかもしれない。

お気に入りのギャラリーが大阪、長居公園近くに有る。
前庭のある画廊、ギャラリー・キット・ハウスだ。
モミジの葉っぱが茂る中、昔懐かしい竹で作られた腰掛けベンチや、風鈴、
また訪れるのが何時も蚊の多い時なので、渦巻きの蚊取り線香もホッとする情景だ。
子供の頃から馴染み親しんだ習慣に安らぎを覚えるようだ。

庭がさりげなく、肩肘張らないのと同様に、オーナーの京都出身の
岩尾さんとも似ている。
リラックスして何の心配も、虚勢も張らずに話出来る相手として、
著名なアーティストから学生、コレクターや近辺の奥さん達も気楽に集まって来る
魅力あるオーナーと前庭。
ギャラリーと言う敷居の高さを、まず前庭の気楽さがカバーして、
一歩中に入るとオーナーがアットホームな気分にしてくれる二人三脚の感じだ。
本来、庭とはリラックス出来る自然を感じる場であるべき、と思う。
クリーム色の花を咲かせるマーガレット・アイビーを岩尾さんから養子にもらって
鉢植えにしたのが我が家で今、葉っぱを増やしている。

          
     

さて、我が家の庭は?というと、人様に見て頂けるような大それた物ではない。
元々牧場に建てられた古い農家で、牧草だけの木の全くないだだっ広い敷地、
1ヘクタール余り、坪にして約3300坪。
それを木で埋めたいと思った訳で、お金があれば計画的にデザインして
一気に立派な庭園として造る事は可能だが、悲しいかな事情が許さない。
何年もかけて、その都度入手出来る木を無計画に植え続けた。

パリからムーラン駅に電車で着くと、まず植木屋に直行。
売っている木が季節ごとに変わるので、年中植木屋に通ったものだ。
冬の寒い風から守る為、大木になる針葉樹は防風用に、花の咲く木は家の近くに。
気に入れば、家の中どこからでも見られるようにあっちこっちに植えて、
と言う具合で、全体のバランスも関係なく気まぐれに植えていった。
まず木を買って来て、植える場所を後から考えた。

同時期に同じ場所に植えた同種の木も、土中の水はけの具合や陽当たり具合、
又は何かの影響で成長具合が違う。
所詮、人間の顔形や出来も違うように、自然とは平等に出来ている物ではない、と
納得したりもした。
植えてすぐは、目に見えない根っこが成長するようで木が伸びないが
通常3年目位から木の成長が早い。

木を植え始めてかれこれ20年余り過ぎ去った。
当初、望んだように一応植える場所が無くなる程植え込んだ。
秋から冬にかけて、枝木を切り落とし、なんとか庭と言うより公園のような
スペースになって来た。
木陰のハンモックで昼寝したり本を読んだり、ベンチで休んだり、
訪問者が静かで快適、と喜んでくれるとこの上なく嬉しい。

形式にとらわれない、勝手気侭な庭だけど、要は居心地よい所であれば
自分にとってのパラダイス。
大きく元気に成長して喜びを与えてくれる木達に感謝!
前庭のあるギャラリー・キット・ハウスの様に、ここに来るとホッとする、と
訪問者から来た事を満足してもらえた時、岩尾さんの言われる喜びの意味が分かる。


     

2011年8月、夏の終わりに
 

いくお






back    next


HOME